「iDeCoと退職金、両方もらえるのはありがたいけど、税金ってどうなるの?」——定年が近づく50代にとって、これは避けて通れないテーマです。実は2026年1月から、退職金やiDeCo一時金にかかる退職所得控除のルールが改正され、これまで知られていた「5年ルール」が「10年ルール」に変わりました。受け取る順番とタイミングを間違えると、税金で数十万円単位の差が出ることもあります。本記事では、退職所得控除の仕組みと2026年改正のポイント、50代がとるべき受け取り戦略を、図解とパターン別でやさしく整理します。



📑 目次
結論:iDeCoを先に受け取るなら退職金まで「10年」あける
まず結論からお伝えします。2026年1月の改正で、退職所得控除の「受け取りタイミングのルール」が次のように変わりました。
- ① iDeCoを先に一時金で受け取る場合の「5年ルール」が「10年ルール」へ:これまでは退職金まで5年あければ控除を別々に使えたが、2026年1月以降は10年あける必要がある
- ② 退職金を先に受け取る場合の「19年ルール」は変更なし:会社の退職金を先に受け取ってからiDeCoを受け取るケースのルールは従来どおり
- ③ 影響を受けるのは「60歳でiDeCoを一時金で受け取り、その後に退職金」のパターン:60代前半で両方受け取る人は要注意
つまり、「iDeCoを60歳で一括受け取り→65歳で退職金」という王道パターンが、2026年からは税制上不利になりやすいのです。とはいえ、対策はあります。順番に図解で見ていきましょう。
そもそも「退職所得控除」とは?税金がやさしくなる仕組み
退職所得控除とは、退職金やiDeCo・企業型DCを「一時金(一括)」で受け取るときに使える、税金の大きな優遇制度です。退職金は長年の勤労に対する報酬なので、給与などと同じように課税すると負担が重くなりすぎます。そこで、受け取った金額から「退職所得控除」を差し引き、さらに残りを半分にしてから課税するという、二重に手厚い仕組みになっています。
控除額は勤続年数(iDeCoの場合は加入年数)で決まります。
・勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
・勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年)
※1年未満の端数は切り上げ。たとえば勤続38年なら 800万円+70万円×18年=2,060万円が控除される。
※理解のための概算です。1年未満の端数切り上げ等は考慮していません。実際の税額は個人の状況で異なります。
図1のとおり、勤続年数が長いほど控除は大きくなり、勤続38年なら2,000万円超が非課税になります。退職金がこの控除額の範囲に収まれば、退職金にかかる税金はゼロ。これが退職所得控除の威力です。問題は、この「控除枠」を退職金とiDeCoで“取り合い”になる点にあります。

なぜ「受け取る順番」で税金が変わるのか
ここが今回の核心です。退職金とiDeCoを近い時期に両方一時金で受け取ると、税務上は「勤続年数(加入年数)が重なっている期間」を二重に控除できないルールになっています。これを「重複排除」と呼びます。
たとえば、会社で38年働き、その間にiDeCoにも20年加入していたとします。退職金とiDeCoを同じ年に受け取ると、控除に使えるのは長いほうの「勤続38年分」だけ。iDeCoの20年分を別に上乗せすることはできません。つまり、受け取る時期が近いと控除枠が1回分に圧縮されてしまうのです。
そこで重要になるのが「受け取る年を十分にずらす」こと。一定の年数をあけて受け取れば、退職金とiDeCoでそれぞれ別々に退職所得控除を満額使えます。この「何年あければよいか」のルールが、2026年に変わったのです。
- iDeCoが先 → 退職金が後:退職金から見て「前年以前9年以内」にiDeCo一時金があると控除を調整(=10年あける必要)→ 2026年改正の対象
- 退職金が先 → iDeCoが後:iDeCoから見て「前年以前19年以内」に退職金があると控除を調整(=19年あける必要)→ 変更なし
2026年改正:5年ルール→10年ルールで何が変わったか
2026年1月1日に施行された改正(令和7年度税制改正)のポイントは、「iDeCo・企業型DCを先に一時金で受け取り、その後に退職金を受け取る」場合の調整期間が、これまでの5年から10年に延長されたことです。
※iDeCoを先に一時金で受け取り、その後に退職金を受け取るケースが対象。2026年1月1日以後に退職金を受け取る場合に適用されます。
従来は、iDeCoを先に受け取った場合、後の退職金から見て「前年以前4年以内」(=5年あければOK)にiDeCo一時金があると控除が調整される仕組みでした。これがいわゆる「5年ルール」です。たとえば60歳でiDeCoを一時金で受け取り、65歳で退職金を受け取れば、5年あいているので両方の控除を満額使えました。
ところが2026年1月以降は、この期間が「前年以前9年以内」(=10年あける必要)に拡大されました。これが「10年ルール」です。先ほどの「60歳iDeCo→65歳退職金」のパターンは、間隔が5年しかないため、改正後は退職金側の控除が一部使えなくなり、課税対象が増えて手取りが減る可能性があります。
※実際の増税額は退職金額・勤続年数・iDeCo加入年数で大きく異なります。具体的な試算は税理士等にご相談ください。
なお、逆の順番——退職金を先に受け取ってからiDeCoを後で受け取る場合のルール(前年以前19年以内=「19年ルール」)は、今回の改正では変更されていません。改正の影響を受けるのは、あくまで「iDeCoが先・退職金が後」のパターンだという点を押さえておきましょう。
※制度を簡略化した整理です。適用要件・例外は国税庁の最新情報をご確認ください。

50代がとるべき受け取り戦略(パターン別)
では、50代は実際にどう備えればよいのでしょうか。代表的なパターンごとに考え方を整理します。最終的には個別の試算が必要ですが、方向性をつかんでおくだけで判断がぐっと楽になります。
① 退職金が控除の範囲に収まる人 → 順番をあまり気にしなくてよい
退職金が退職所得控除額(勤続38年なら約2,060万円)の範囲に十分収まる人は、そもそも退職金部分の課税が小さいため、受け取り順による影響も限定的です。中小企業勤務などで退職金がそれほど多くない場合は、過度に神経質になる必要はありません。
② 退職金が控除を大きく超える人 → 「同じ年にまとめる」も選択肢
退職金が控除額を大きく超える大企業勤務などのケースでは、iDeCoと退職金をあえて同じ年にまとめて受け取ることで、トータルの税負担を抑えられる場合があります。控除は1回分に圧縮されますが、「中途半端に数年だけずらして調整を受ける」よりも有利になるケースがあるのです。ここは試算が分かれるところなので、専門家と一緒にシミュレーションするのがおすすめです。
③ 長く働ける人 → iDeCoを「年金(分割)」で受け取る手も
iDeCoは一時金だけでなく、年金形式(分割)や一時金との併用でも受け取れます。一時金で受け取らなければ退職所得控除の重複問題は起きません。年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」の対象になります。60代も働いて収入があるうちは、iDeCoを急いで一時金化せず、受け取り方を分散するのも有効です。iDeCoの受け取り方全体はiDeCoの受け取り方完全ガイドで詳しく解説しています。
④ まず自分の「数字」を把握する
戦略を立てる大前提は、自分の退職金見込み額・勤続年数・iDeCo加入年数を正確に知ることです。退職金は勤務先の退職金規程で、iDeCoは運営管理機関のサイトで確認できます。これらの数字がそろって初めて、「どの順番・どのタイミングが得か」を計算できます。判断に迷う場合は、税理士やFPに早めに相談しましょう。
受け取った資金は新NISAで運用しながら取り崩す
受け取り方の最適化で手取りを守ったら、次に考えたいのが「受け取った資金をどう活かすか」です。退職金やiDeCo一時金をすべて預金で寝かせると、物価上昇(インフレ)で実質的な価値が少しずつ目減りします。すぐに使わない分は、新NISAの非課税枠を使って運用しながら、必要な分だけ取り崩していくのが、長生き時代に資産寿命を延ばすコツです。
具体的な取り崩しの考え方は新NISAの出口戦略|4%ルールのリアルで詳しく解説しています。運用には、低コストの投資信託が豊富で手数料の安いネット証券が向いています。
また、これからiDeCoを始める・続ける50代には、運営管理手数料が無料のネット証券のiDeCoが有力です。iDeCoの掛金は全額が所得控除になるため、働いて収入があるうちは節税メリットも大きくなります。
まず体系的に学びたいなら入門書から
退職金・iDeCo・年金・税金の全体像を一冊で押さえたい人は、図解の入門書から入るのが効率的です。たとえば『知らないと大損する! 定年前後のお金の正解 改訂版』(板倉京)は、退職金の受け取り方や手取りを増やすコツが具体的に整理されており、定年が近づく50代の最初の1冊に向いています。
参考になる一次情報
- 国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」:退職所得控除額・課税方法の公式情報
- iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会):iDeCoの受け取り方・制度の基礎
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👉 主要ネット証券5社(SBI・楽天・マネックス・松井・auカブコム)をまとめて比較したい方は 【2026年最新】ネット証券おすすめ比較ランキング|5社徹底比較 もご覧ください。
まとめ:順番とタイミングを制する者が手取りを制する
- 退職所得控除は退職金・iDeCo一時金にかかる強力な税優遇。控除額は勤続(加入)年数で決まる
- 退職金とiDeCoを近い時期に受け取ると、控除枠が重複排除され1回分に圧縮される
- 2026年1月から、iDeCoが先・退職金が後の場合の「5年ルール」が「10年ルール」に拡大
- 退職金が先・iDeCoが後の「19年ルール」は変更なし
- 「60歳iDeCo→65歳退職金」の王道パターンは改正後に不利になりやすい
- 対策は「同じ年にまとめる」「iDeCoを年金形式で受け取る」「働く期間を調整する」など。まず自分の数字を把握し、専門家と試算を
2026年の改正は、定年前後でiDeCoと退職金を両方受け取る50代に直接かかわる重要な変更です。受け取り方は一度きりの選択で、やり直しがききません。だからこそ、50代の今のうちに仕組みを理解し、自分の退職金・iDeCoの数字を把握しておくことが、将来の手取りを大きく左右します。受け取り方の最適化で守ったお金は、新NISAで運用しながら賢く取り崩す——この一連の流れを、一緒にコツコツ設計していきましょう!
※本記事は2026年6月時点の公開情報・制度を基にした一般的な情報提供であり、特定の手続きや投資手法を推奨するものではありません。税制は改正される可能性があり、退職所得控除や受け取りタイミングの取り扱いは個人の勤続年数・退職金額・iDeCo加入年数等により異なります。具体的な税額の試算や受け取り方の判断は、税理士・FP等の専門家にご相談のうえ、国税庁・iDeCo公式等の最新の公式情報をご確認ください。投資には元本割れのリスクがあります。








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