50代の投資では「どう積み立てるか」の記事はいくらでも見つかるのに、「どう取り崩すか」の実務になると途端に情報が減ります。ところが2025年12月、SBI証券が投資信託の定期売却サービスを拡充し、NISA口座でも自動で取り崩せるようになりました。楽天証券はすでに対応済み。つまり2大ネット証券がそろって「出口の自動化」に対応したのが、いまの状況です。



📑 目次
結論:定率で長く持たせるなら楽天、月末受取とボーナス月ならSBI
先に結論からお伝えします。
- 3方式(金額・定率・期間指定)が使える点は両社とも同じ。NISA口座での設定も両社対応済み
- 定率の刻みは楽天証券が0.01%単位(下限0.01%)、SBI証券が0.1%単位(下限0.1%)。細かく調整したいなら楽天
- 受取日はSBI証券が「月末」を選べる。楽天証券は1日〜28日の指定(休日は前営業日にシフト)
- SBI証券は年2回のボーナス月上乗せを設定できる。固定資産税や車検の月に厚く受け取れる
- 楽天証券は「積立設定中の銘柄」を定期売却の対象に指定できない。積み立てながら一部取り崩す運用には注意
- いちばん重要なのは会社選びより「方式選び」。同じ2,000万円でも定額・定率・期間指定で結果はまるで違う
つまり「どっちの証券会社か」より先に決めるべきは「どの方式で取り崩すか」です。順番に見ていきます。
定期売却サービスとは|「毎月分配型の代わり」として広がった仕組み
定期売却サービスは、保有している投資信託を、あらかじめ決めたルールで自動的に売却して現金を受け取る仕組みです。イメージとしては「積立の逆回転」。積立が毎月自動で買うなら、定期売却は毎月自動で売ります。
なぜ今、各社が力を入れているのか
背景には毎月分配型投資信託をめぐる整理があります。毎月お金が入ってくる商品として人気だった毎月分配型は、元本を取り崩して分配する「タコ足配当」になりやすいという問題を長く指摘されてきました。新NISAの対象商品からも外れています。
そこで各社が用意したのが「低コストのインデックスファンドを持ったまま、必要な分だけ自動で売る」という選択肢です。中身は自分で選んだファンド、取り崩しペースも自分で決められる。毎月分配型が抱えていた不透明さを避けながら、毎月お金が入る形は再現できる——これが定期売却サービスの位置づけです。
- 毎月分配型:分配金の額は運用会社が決める。元本払戻金(特別分配金)が混ざっていても、明細を見ないと気づきにくい
- 定期売却サービス:いくら売るかを自分で決める。売った分だけ残高が減るので、資産の減り方が見えやすい
- 新NISAの成長投資枠では、そもそも毎月分配型は対象外。「毎月受け取りたい」なら定期売却が実質的な選択肢になる
毎月分配型の仕組みそのものについてはプラチナNISAとは?「毎月分配型」とタコ足配当の罠で詳しく整理しています。
楽天証券 vs SBI証券|仕様を並べて比較する
※サービス内容・設定条件は変更される場合があります。必ず各社公式サイトで最新情報をご確認ください。
大枠は「ほぼ同じ」と考えていい
3つの指定方式(金額・定率・期間指定)が使えること、毎月/奇数月/偶数月から受取頻度を選べること、そしてNISA口座で設定できること——この骨格は両社共通です。SBI証券は2025年12月6日の機能拡充で定率・期間指定とNISA口座対応が加わり、楽天証券に追いつきました。
差がつくのは「細部の使い勝手」
大枠が同じだからこそ、差は運用のしやすさに関わる細部に出ます。図1でオレンジにした4項目です。
- 定率の刻み:楽天0.01%単位/SBI 0.1%単位
- 受取日:楽天1〜28日/SBI 1〜27日+月末
- ボーナス月:SBIは年2回の上乗せ設定が可能
- 積立中の銘柄:楽天は定期売却の対象に指定できない


定額・定率・期間指定|2,000万円で試算すると別物になる
ここが本題です。同じ2,000万円をスタート地点にしても、方式を変えるだけで資産の残り方も受取額もまったく違うものになります。年3%(コスト・税引後の想定)で運用しながら取り崩した場合を試算しました。
※初期残高2,000万円・運用利回り年3%が一定と仮定した年1回複利の簡易試算です。実際は相場変動により結果が大きく変わり、将来の運用成果を保証するものではありません。
①金額(定額)指定:わかりやすいが、いつか尽きる
毎月10万円=年120万円を取り崩す設定です。受け取る額が一定なので家計は組みやすいのですが、試算では23年目で底をつきました。50代後半で始めれば80歳前後、60代半ばで始めれば80代後半——ちょうど「まだ生きている」時期に資産が消える計算になります。
しかも定額の怖さは相場が下がった年ほど多くの口数を売ってしまう点です。基準価額が下がっても10万円を確保するには、口数を余分に売るしかありません。下落局面で資産の目減りが加速する——これが定額方式の構造的な弱点です。
②定率指定:尽きないが、受取額が細っていく
残高の年6%(毎月0.5%相当)を売る設定です。残高に比例するため、原理的に資産がゼロになりません。試算では30年後も約759万円が残りました。
ただし裏返しがあります。受取額も残高に比例して減っていくのです。初年度は年120万円受け取れますが、11年目は約87万円、21年目は約63万円(初年度の約52%)まで下がります。
※定率は残高に比例するため受取額が逓減し、期間指定は残年数で割るため逓増します。実際の受取額は相場変動により変わります。
③期間指定:受取額が増えていき、期限でぴったり終わる
20年で使い切る設定です。残っている口数を残り年数で割って売るため、運用がプラスなら受取額は年々増えていきます。試算では1年目100万円→10年目約131万円→20年目約175万円。
ただし当然ながら20年で残高はゼロです。「公的年金の繰下げ受給をする5年間だけ、資産でつなぐ」といった期限が決まっている使い方にはこの上なく向いていますが、寿命の代わりに使う道具ではありません。
- 金額(定額)指定:家計が組みやすい。ただし尽きる時期を必ず試算しておくこと。生活費の不足分を埋める用途向き
- 定率指定:資産寿命がいちばん長い。受取額の変動を受け入れられる人向き。年金+αの「贅沢費」に充てるなら相性がいい
- 期間指定:「65歳から70歳までの5年間」など期限が明確な用途に最適。年金繰下げのつなぎ資金として使いやすい
- 併用も可能:たとえば生活費の不足分は定額、旅行費は定率、というように銘柄を分けて設定する手もある
※上記は一般的な整理であり、特定の方式・商品を推奨するものではありません。実際の設定可否・上限は各社の規定をご確認ください。

4%ルールや取り崩しの考え方そのものは新NISAの出口戦略|50代から考える取り崩し方と4%ルールのリアルで解説しています。どの口座から先に取り崩すかは50代からの資産取り崩し「順序」完全ガイドをどうぞ。
見落としやすい4つの差|刻み・受取日・積立との併用・ボーナス月
①定率の刻み|楽天0.01%単位 vs SBI 0.1%単位
楽天証券は0.01%以上50%以下・0.01%単位、SBI証券は0.1%〜50%という設定範囲です。2,000万円に対して0.1%は年24万円、0.01%なら年2.4万円。「もう少しだけ受取を増やしたい/減らしたい」という微調整のしやすさは、楽天証券に分があります。
②受取日|SBIは「月末」が選べる
楽天証券は1日〜28日から選び、休日にあたる場合は前営業日にシフトします。SBI証券は1〜27日に加えて「月末」を指定できます。
これは地味に効きます。公的年金は偶数月の15日に振り込まれるため、その谷になる奇数月や、クレジットカードの引き落とし日に合わせたい人にとって、受取日の自由度は生活のリズムそのものだからです。
③積立との併用|楽天は「積立中の銘柄」を指定できない
ここが実務上いちばん影響が大きい違いかもしれません。楽天証券では積立設定がある銘柄を定期売却の対象に指定できません。
- 50代は「まだ積み立てている」と「もう取り崩し始めた」が重なる時期。60代でぴたりと切り替わるわけではない
- たとえば「オルカンを毎月積立しつつ、別の資金需要で毎月3万円だけ取り崩す」という運用は、同一銘柄では組めない
- 回避策は銘柄を分けること。積立用と取り崩し用で別ファンドにする、あるいは積立を止めてから定期売却を設定する
- そもそも同じ銘柄を買いながら売るのは非効率でもある。設計として分けたほうがすっきりする、という見方もできる
④ボーナス月|SBIは年2回の上乗せが可能
SBI証券は年2回まで「ボーナス月」を設定して受取額を上乗せできます。固定資産税、自動車税、車検、帰省費——50代以降も「その月だけ大きく出ていく支出」は消えません。定期売却をボーナス月に対応させておくと、そのたびに手動売却する手間がなくなります。
取り崩し期の税金や社会保険料の考え方は「退職翌年の住民税」がヤバい?”住民税ショック”の正体でも触れています。
新NISA口座で使うときの注意|非課税枠は翌年に復活する
両社ともNISA口座で定期売却を設定できますが、NISAで売るということは非課税枠を動かすということです。ここは押さえておく必要があります。
- ①売却益に税金はかからない。特定口座なら約20.315%が引かれるところ、NISAならそのまま受け取れる
- ②売却した分の簿価(取得価額ベース)の枠は、翌年に復活する。売ったその年のうちには戻らない
- ③年間投資枠(つみたて120万円+成長240万円)の上限は変わらない。復活しても、その年に入れられる額には上限がある
※NISA制度の詳細・枠の再利用ルールは金融庁のNISA特設サイトで最新の一次情報をご確認ください。
取り崩し期に入っているなら「枠が復活しても使わない」ケースがほとんどですが、50代で「一部を取り崩しつつ、別のファンドに買い直したい」場合は、この翌年復活のタイムラグが効いてきます。枠の再利用ルールは新NISAの非課税枠は売ったら復活する?「枠の再利用」ルールと簿価ベースの仕組みで詳しく解説しています。

50代の実務|いつ設定して、どこから取り崩すか
設定は「必要になってから」でいい。ただし試算は今すぐ
定期売却サービスはいつでも設定・変更・解除ができます。ですから50代のうちに設定を入れておく必要はありません。今やるべきなのは設定ではなく「試算」です。
- ①「何歳から、月いくら必要か」を出す。ねんきん定期便で年金見込み額を確認し、生活費との差額を計算する
- ②その額で何年もつかを試算する。本記事の図2のように、定額なら尽きる年を必ず確認しておく
- ③足りないなら、いま打てる手を打つ。積立額を増やす/固定費を削る/働く期間を延ばす/年金を繰り下げる
年金見込み額の確認方法は50代のねんきん定期便の見方完全ガイドで手順どおりに解説しています。繰下げ受給と資産取り崩しの組み合わせは公的年金の繰下げ受給は得か損かをどうぞ。
どちらの証券会社を選ぶかは「積立している場所」で決まる
身も蓋もない話ですが、定期売却サービスのために証券会社を移すのは合理的ではありません。投資信託の移管は手数料や手間がかかり、NISA口座の移管に至っては保有商品をそのまま動かせないためです。
そのうえでこれから口座を作る、あるいは2社目を検討しているなら、判断材料は次のとおりです。
- 受取額を細かく調整したい/楽天経済圏を使っている → 楽天証券
- 月末受取にしたい/ボーナス月の上乗せを使いたい/三井住友カードでクレカ積立をしている → SBI証券
- 積み立てながら同じ銘柄で取り崩す可能性がある → 楽天証券は同一銘柄で不可のため、銘柄を分ける設計が必要
両社の総合比較は楽天証券 vs SBI証券|50代の新NISAで選ぶなら結局どっち?で、保有ポイントの差は投信の保有ポイントはどこが得?松井証券 vs SBI証券 vs 楽天証券で整理しています。
なお、投資信託の売却時の基準価額の決まり方や換金の仕組みは投資信託協会の公式サイトに図解付きの解説があります。制度面の一次情報とあわせて確認しておくと安心です。
定期売却サービスは楽天証券・SBI証券とも3方式に対応し、NISA口座でも設定可能。差は定率の刻み(楽天0.01%/SBI 0.1%)・受取日(SBIは月末可)・ボーナス月(SBIは年2回)・積立中銘柄の可否(楽天は不可)の4点です。会社選びより先に「定額・定率・期間指定のどれか」を決めてください——同じ2,000万円が、23年で尽きるか30年後も759万円残るかを分けるのはそこです。
これからSBI証券の口座を開くなら、ポイントサイトを経由するだけで開設分の還元を上乗せできます。取り崩す前の「積み上げ期」にしかできない、確実性の高い上乗せです。
取り崩し期に向けて「配当が続く株」を自分で選びたい方には、銘柄分析ツールを無料で使えるマネックス証券という選択肢もあります。
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まとめ:出口の設計は「積立を始めた日」から考えていい
- 楽天証券・SBI証券とも、金額/定率/期間指定の3方式に対応。NISA口座での設定も両社可能(SBIは2025年12月6日から)
- 定率の刻みは楽天0.01%単位(下限0.01%)vs SBI 0.1%単位(下限0.1%)。微調整のしやすさは楽天
- 受取日はSBIが「月末」を選べる。楽天は1〜28日(休日は前営業日にシフト)
- SBIは年2回のボーナス月上乗せが可能。固定資産税や車検の月に厚く受け取れる
- 楽天は「積立設定中の銘柄」を定期売却の対象にできない。積立と取り崩しを同時にやるなら銘柄を分ける設計が必要
- 2,000万円・年3%の試算では、定額(月10万円)は23年目で底をつく
- 定率(年6%)なら30年後も約759万円残るが、21年目の受取額は初年度の約52%まで減る
- 期間指定(20年)は受取額が年々増え、20年でぴったりゼロ。年金繰下げのつなぎ資金に向く
- NISAで売った枠は「翌年」復活する。その年のうちには戻らない点に注意
取り崩しは「投資が終わったあとの話」ではありません。どう取り崩すかを決めておくと、いま積み立てるべき額が逆算できます。月いくら必要で、それが何年もつのか——数字が出れば、やるべきことは自然に決まります。50代のうちに一度だけ計算しておきましょう。一緒にコツコツやっていきましょう!
配当・分配という形で資産から現金を受け取り続けるという発想の土台になる古典です。取り崩しの方式を選ぶ前に、そもそも自分は何のために資産を持っているのか——ここに立ち返ると、方式選びの判断が驚くほど楽になります。
※本記事は2026年8月28日時点の楽天証券・SBI証券および金融庁の公表情報を基にした一般的な情報提供であり、特定の証券会社・金融商品・取り崩し方式の利用を推奨するものではありません。定期売却サービスの仕様(指定方式・設定範囲・受取日・対象口座・ボーナス月設定の可否等)は変更される場合があるため、必ず各社公式サイトで最新情報をご確認ください。本文中の試算は初期残高2,000万円・運用利回り年3%(コスト・税引後)が期間中一定と仮定した年1回複利の簡易計算であり、実際は相場変動・信託報酬・売却時の基準価額・税制により結果が大きく変わります。将来の運用成果を保証するものではありません。NISA制度の非課税枠・枠の再利用ルール・年間投資枠および税制は変更される場合があります。投資信託は元本保証の商品ではなく、価格変動・為替変動により元本割れが生じる可能性があります。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。








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